月. 12月 23rd, 2024

    日本リスク学会長 米田 稔

    2023年度日本リスク学会 学会賞、奨励賞、グッドプラクティス賞を以下のように決定しましたのでお知らせします。
    学会員からの推薦に基づき、表彰委員会での厳正な審査により選考されました。 北海道大学で開催される第36回日本リスク学会年次大会の1日目(2023年11月11日(土))17時より、表彰式を執り行います。受賞者による受賞講演も行われます。

    【日本リスク学会 学会賞】
    東 賢一(関西福祉科学大学 健康福祉学部)
    選考理由:東 賢一氏は、衛生・公衆衛生学、健康リスク評価学、疫学を専門として、主に室内空気質の分野において、永年にわたり多くの研究業績をあげてきた。世界保健機関(WHO)、国際がん研究機関(IARC)等の国際機関の専門委員を歴任するなど、国内外における当該分野への多大な貢献が認められる。日本リスク学会では、2010〜2022年度に編集委員を務め、2022年度から表彰委員会委員を務めている。増補改訂版リスク学事典の執筆やRisk Analysis誌、Journal of Risk Research誌での論文発表がある。
    以上より、学会活動及び研究実績において特に顕著な業績があると認められるため、学会賞に相応しいと考える。 ※ 東 賢一氏は、日本リスク学会の表彰委員会委員を務めているが、表彰委員会規程に基づき、本賞の審査・選考の過程には関与しなかった。

    【日本リスク学会 奨励賞】
    高田モモ(産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門)
    選考理由:高田モモ氏は、地圏環境を中心として、原子力災害に由来するリスクの分野で活躍している。「リスク学研究」誌を含め多数の論文発表を行っており、日本リスク学会年次大会でも口頭発表・企画セッション・ポスター発表などで活発な発表を行っている。また、第35回日本リスク学会年次大会の実行委員(プログラム担当)を務めるなど、学会運営への貢献も大きい。  以上より、今後一層の発展が期待される優秀な研究業績を挙げていると認められるため、奨励賞に相応しいと考える。

    【日本リスク学会 グッドプラクティス賞】(推薦書到着順)

    朝日新聞社 デジタル企画報道部
    代表:山崎 啓介(朝日新聞社 デジタル企画報道部)
    活動名:「みえない交差点」
    選考理由:朝日新聞社 デジタル企画報道部(当時の名称:デジタル機動報道部)は2022年4月、警察庁が公開している全国の人身事故のデータ70万件を独自に分析し、事故発生地点をすべて掲載したマップを公開したほか、主に小さな交差点で、事故が多発しているのに統計に表れない場合があることを突き止め、「みえない交差点」と名付けて報じた。ビッグデータを用いたリスクの可視化の実例として重要な示唆を与えるとともに、学校への無償提供を行うなど、現実の社会課題の解決において大きな役割を果たした。  以上より、リスク学の社会実装や普及にかかる顕著な実践的活動であると認められるため、グッドプラクティス賞に相応しいと考える。

    「環境基準等の設定に関する資料集」作成グループ
    代表:大野 浩一(国立環境研究所環境リスク科学研究推進室)
    活動名:「環境基準等の設定に関する資料集の作成と公開」
    選考理由:環境基準等は、環境汚染を防止するための施策の目標として設定されているものである。本活動により、初めてその設定・改訂に関する経緯や根拠に関する詳細が、一次資料等とともに一元的に集約・整理・公開されたことは、今後のリスク学と政策決定とのあり方を考えていく上で極めて意義深いものである。資料集は、国立環境研究所のウェブサイト上で、誰でも閲覧・検索可能な形で公開されている。また、本資料集の作成経緯等については、日本リスク学会第35回年次大会の企画セッション及び「リスク学研究」誌において報告された。  以上より、リスク学の社会実装や普及にかかる顕著な実践的活動であると認められるため、グッドプラクティス賞に相応しいと考える。なお、今後、本資料集を広く社会実装していく活動を期待する。また、本資料集の作成に触発され、他の分野でも同様の活動がなされることを期待する。

    「健康のため水を飲もう」推進委員会
    代表:青木 秀幸(公益社団法人日本水道協会)
    活動名:「『健康のため水を飲もう』推進運動」
    選考理由:本活動は、永年にわたり、熱中症等の健康障害の予防に適切な水分補給が重要であることを訴える各種の啓発活動を行ってきたものである。水分摂取量不足が各種健康障害のリスク要因であることの定量的な解析に基礎を置きながら、一般の人たちにも分かりやすい内容や表現での解説を行ってきた。ポスター掲示やチラシ作成、スポーツイベントでのアナウンス、学校や高齢者への啓発活動などを通じて、熱中症対策などの健康障害のリスク低減に貢献した。近年の夏季の気温上昇を鑑みると、本活動の重要性はさらに高まっている。  以上より、リスク学の社会実装や普及にかかる顕著な実践的活動であると認められるため、グッドプラクティス賞に相応しいと考える。

    富士山火山広域避難計画検討委員会
    代表:藤井 敏嗣(山梨県富士山科学研究所)
    活動名:「富士山火山避難基本計画の策定」
    選考理由:富士山火山避難基本計画は、富士山ハザードマップが令和3年3月に改定され、対象自治体・対象人口が桁違いに増加したことに対応して策定された。火山災害という不確実性の高いリスク事象に対し、基本的な噴火シナリオを整理し、平時から噴火開始、噴火活動の終息まで、段階に応じた対応が検討されている。ハザードの特性を科学的に明らかにし、火山噴火からの安全確保だけではなく、日常生活の維持にも配慮されている。関係自治体や住民、関連業界の災害対応計画、準備等に影響を与えた。他の火山周辺地域に対しても大きなインパクトがあると考えられる。  以上より、リスク学の社会実装や普及にかかる顕著な実践的活動であると認められるため、グッドプラクティス賞に相応しいと考える。

    以上

    By sraj