「不安の中での意思決定−リスク学のさらなる普及」
新型コロナウィルスが猛威を振るい始めて3年。昨年度の時点では、本年度の大会を開催する頃にはさすがにもう新型コロナウィルスも収まっているのではと思っていたのですが、今年度もまたコロナ禍の中での年次大会となりました。今年度は現地での対面式による発表とオンラインとの併用による大会開催を目指しておりますが、この原稿を書いている2022年7月の時点では、まだ先が見通せないでいます。思えばこのコロナ禍において、我々はリスクの比較と選択を強く意識することが何度かありました。例えば新型コロナウィルスのワクチン接種です。ワクチンを接種することによる副作用のリスクと、ワクチンを接種しないことによる新型コロナウィルスへの感染リスクを人々は秤に掛けることになりました。その結果、特に若い世代において、ワクチンを接種しないことを選択した人々も多いようです。また、洪水による避難指示下において、新型コロナウィルスへの感染リスクが増大しても公共の避難所に避難すべきか、あるいは別のなんらかの避難方法を考えるべきか、といった選択でも人々はリスクの比較を行ったように思います。そして思いもしなかった国際情勢の悪化が様々なリスクを誘発し、人々に不安の中での意思決定を迫って来ます。このような意思決定においてリスクの研究者らは実際にどのように貢献できるのか、本大会ではそれを明らかにしてリスク学というトランスバウンダリーな学問分野が広く社会に受け入れられていくための議論ができればと考えております。ぜひとも、多くの方々に本大会にご参集頂けることを期待しております。
大会実行委員長 京都大学 米田稔