11/21(土)9:00〜10:30
O1 福島からCOVID-19を、COVID-19から福島を考える(村上道夫)
わざわいにはそれぞれに固有の特徴があり、単純な類型化には注意を要します。しかしながら、COVID-19禍において、私たちは、福島での災害での経験から、ある種のデジャヴュを感じることがあります。福島での経験からCOVID-19禍に関する対策を考えることや、COVID-19禍での事例から原子力災害への対応のあり方を考えることは決して少なくありません。一方で、福島での災害において、被ばく以外の二次的な健康影響が大きな課題だったからといって、コロナ禍においても感染症以外の二次的な健康影響が重篤であるとは単純には言えませんが、私たちは、意識していないと、ついそのように考えてしまいがちなところもあるように感じています。そこで、本企画セッションでは、福島での災害とコロナ禍の共通点と相違点を整理するとともに、社会政策上の示唆を議論します。
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O2 複雑な環境下における食の安全と安心のリスクコミニュケーションを考える(関澤純)
本年6月施行の改正食品衛生法、機能性表示を含む食品表示法の4月完全施行の動きとともに、新型コロナウイルス感染の不安やストレスが社会、生活、経済、人々の思考を覆い、食の安全と安心についてさまざまの課題が生じている。これまで多くの人々はいわゆる「健康食品」に健康・長寿を期待・利用した結果、思わぬ被害に遭う事例も報告されてきた。このような状況下に、安全と安心の認識のギャップの適切な解決には、心身の健康の意味の理解とそれらを構成する背景要因について具体的に検討する必要がある。異なる専門分野のメンバーがそれぞれの調査・研究成果を基礎に、これらの課題に取り組んできた成果の一部を報告する。
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11/21(土)10:45〜12:15
O3 新型コロナウイルス感染症をめぐるレギュラトリーサイエンス(永井孝志、村上道夫)
新型コロナウイルス感染症対策をめぐっては、以下に示すようなこれまでリスク学の中で広く議論されてきた課題が繰り返し現れた: ・純粋科学と政策の間を埋めるレギュラトリーサイエンスの位置づけの明確化 ・専門家の役割の明確化(リスク評価とリスク管理の分離) ・受け入れられるリスクの大きさ(安全目標)の設定 ・現状ではなく将来予測に基づいた対策 ・規制のギャップの修正 ・リスクトレードオフの考慮 ・リスクコミュニケーションの司令塔の不在 つまり、これまでに経験したことのないエマージングリスクの対策においても、早期に課題を絞り出すことにリスク学の知見の蓄積は大きく役立つと考えられる。 このような背景から、本企画セッションでは以下のような話題を取り上げる: ・専門家の位置づけとして科学と政策の関係 ・予測に基づく対策としてオリンピックなどの大規模イベントのリスク評価 ・規制のギャップとして消毒薬の効果の評価 ・リスクトレードオフとしてコロナウイルスの死亡リスクと経済影響の比較 そして、リスク学の考え方が新型コロナウイルス対策に貢献できる部分を議論したい。 なお、本企画セッションは日本リスク研究学会レギュラトリーサイエンスタスクグループが提案するものである。
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O4 市民の不安に寄り添う食のリスクコミュニケーション(山崎毅)
新型コロナも含めてリスクの不確実性の中で、不安に満ちた消費者市民へのリスクコミュニケーションの在り方について、食のハザード(食品添加物・残留農薬・飲食業の新型コロナ対策・ゲノム編集食品)をテーマに議論する。
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11/22(日)9:00〜10:30
O5 環境汚染情報のコミュニケーションの最新動向(竹田宜人)
近年、土壌汚染対策や環境修復事業において、ステークホルダーの参画を含めた多面的評価に基づく合意形成やコミュニケーションの必要性が叫ばれている。一方で、ステークホルダーの参画については、その範囲や代表性の確保・参画方法等について課題も多く、現場において悩みも深い。本企画セッションでは、福島第一原子力発電所に関係する環境修復を中心に、除去土壌等の再生利用に関するステークホルダーとの合意形成、オンライン講義・ワークショップを活用した人材育成活動、旧避難区域における地域社会との対話やコミュニケーションの事例等の話題提供を頂き、持続可能な環境修復を考える上でのステークホルダーの参画やコミュニケーションが果たす役割について議論を深めたい。
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O6 新型コロナウイルス感染症流行に対する市民の対応:一般市民、海外在住日本人(土田昭司、元吉忠寛)
新型コロナウイルス感染症流行により、政府と自治体は、マスク・手洗いの励行、いわゆる三密の回避、外出・登校・出社・県境をまたぐ移動の自粛、外食・コンサートなどレジャーの自粛など、高度な自粛生活を市民に要請した。このセッションでは、2020年5月末に実施した1,200名を対象とするオンライン調査結果と、2020年8月末に実施した6,000名を対象とするオンライン調査結果、ならびに、海外在住日本人117名を対象とするオンライン調査結果にもとづいて、1)自粛生活に対する市民の対応、2)自粛生活による心理的ストレスとSNSなどにおける攻撃的・独善的行動、3)新しい生活様式への市民の対応、そして、4)海外在住日本人が経験した心理的ストレスと被差別、などについて報告する。新型コロナウイルス感染症流行によって生じている市民生活におけるリスクの解明と対応について検討する。
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11/22(日)10:45〜12:15
O7 原子力災害の防護方策の意思決定~リスクトレードオフとステークホルダ関与~(加藤尊秋、神田玲子)
大規模な原子力災害が発生した場合、放射線被ばく状況が十分わからない状況下で、放射線防護方策に関する判断がなされる。そのために後にその正当性に疑義を唱えられることがある。ここでいう正当性とは、防護方策により潜在的に社会、経済、環境の破壊のような重大な影響をもたらす可能性があるにしても、防護方策による被ばくの減少が、被災地の人々と環境にとって、害の総和よりも益の方が大きい、という意味である。 しかし、原子力事故の影響は極めて複雑であり、防護方策による社会、環境、経済への影響が長期に続くことを考えると、「防護方策がもたらす結果が被災地の人と環境にとって害よりも益が多い」ことを担保することは大変難しい。 「原子力災害の防護方策の意思決定に関するTG」では、健康、社会、環境、経済等への影響といった観点からの評価結果を統合し、正当化を判断するプロセスを我が国において確立する一助になることを目標に活動を始めたところである、 本セッションでは、Thierry Schneider氏(CEPN)を指定発言者として迎え、意思決定の判断材料であるトレードオフと重要なプロセスであるステークホルダ関与に焦点を当てて情報共有と議論を行いたい。
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O8 災害・事故時に起因する化学物質リスクの評価管理手法(3)~測定、評価技術の発展的応用と組合せを射程として~(伊藤理彩、東海明宏)
2019年度の年会において実施した、同テーマ名の2つの企画セッションとのシリーズとしての位置づけである。今回は、ハザードの把握からリスク評価に用いられる基礎データの測定・解析・評価等の技術とその発展的応用に焦点をあてた議論を予定している。
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11/22(日)14:00〜15:30
O9 新型コロナウィルスの感染拡大防止対策における法と地方自治、倫理の役割(村山武彦)
今年に入って急激にリスク問題の焦点の一つとなった新型コロナウィルス問題については、これまでの問題の中でも特に社会経済活動との接点が極めて強く、健康リスク管理方策のあり方によって、社会経済活動が大きく左右される事態が生じている。さらに、この問題はリスクの発生源が特定しにくいことに加え、無症状の状態から重症化に至る連続的なレベルの健康リスクを多段階で管理する必要が出てきている。このセッションではこうした問題に対して、これまで本学会ではあまり焦点を当ててこなかった法制度や自治体行政、および社会倫理の観点を中心に議論を深めることを目指している。
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